ハードオフの営業利益率が10年前と比べて低下した理由を探る
前回のリユース企業の財務比較で気になったハードオフの営業利益率の大幅な低下について調べて見ました。
各年度の有価証券報告書を見ていくと面白いデータがありました。
下の表をご覧ください。
こちらの表は有価証券報告書に記載されたセグメント情報をまとめたものです。
ハードオフは二つのセグメントに分かれていて、一つは直営店を運営するリユース事業、もう一つがフランチャイズ加盟店を統括するFC事業です。
この表が多くを物語っているわけですが、結論をいうと営業利益率の低いリユース事業の比率が高まっているのが営業利益率低下の直接の原因となっているようです。
10年間でFC事業部の売上と営業利益(OP)が10%程度しか変動していない、一方でリユース事業は売上、営業利益(OP)ともに2.5倍弱と大きく変動しています。
各セグメントのセグメント利益をセグメント売上で割った値は、リユース事業でおよそ15%、一方FC事業では70%になります。
FC事業はハードオフにとってはキャッシュカウとなっていることがよくわかりました。
各社の財務比較でハードオフの営業利益率が高いのは、フランチャイズ形態のビジネスをしていたからなのですね。
リユース企業の財務比較
前回の投稿からずいぶんと時間が立ってしまいましたが、投稿します。
今回はリユース企業の比較です。
メジャーなコメ兵(2780)、ハードオフ(2674)、トレジャーファクトリー(3093)の三社と、
ネット系ベンチャーのマーケットエンタープライズ(3135)を比較してみました。
FY2005 ~ FY2016の期間で比較しました。決算月が異なっていることはあらかじめ断っておきます。
1.財務比較
今回はPL比較のみです。(すいません)
1) はじめはやっぱり売上から。
(出典)各社財務データより筆者作成
売上の絶対額ではコメ兵がダントツでした。ハードオフの2.5倍くらいあります。
10年のスパンではおおむね各社右肩で売上を伸ばしていいるのがわかります。
ただ、コメ兵は2008~2010の間で大きく売上が減少しています。
この辺が気になります。
2) 次は粗利益率です。(以下の比率は売上ベースです。)
(出典)各社財務データより筆者作成
比較して驚きました,これほど差が出あるとは!
コメ兵が群を抜いて粗利率が低いです。
ハードオフ、トレジャーファクトリ二社とコメ兵のちょうど間ぐらいにマーケットエンタープライズの値がありますね。
このあたりの違いの要因がどこにあるのか?
3) 次は人件費率の比較です。
(出典)各社財務データより筆者作成
またまた出ました。
コメ兵がずいぶんと低いパーセントになっています。
粗利率の低さを人件費率の低さで補っていたんですね。
今回は異様のうち最も大きな値を占めていたので人件費を簡易的に紹介しています。
他には家賃、広告宣伝費、減価償却費、光熱費、などがありますがまたの機会に。
4) 次は営業利益率です。
(出典)各社財務データより筆者作成
売上からコストを引いた結果です。
このグラフで気になったのはハードオフの利益率が05'~09'までに急激に減少していることです。
10'以降だとマーケットエンタープライズ以外は順調に利益率を伸ばしています。
2.考察
とりあえず、PLだけざざっと比較しました。
比較してわかったことは、
①ハードオフとトレジャーファクトリはPLの構造と年推移がとても似ている。
②ハードオフとトレジャーファクトリは粗利率が高く、コメ兵は粗利が低い。
③ハードオフとトレジャーファクトリは人件費率が高く、コメ兵は人件費率が低い。
④各社直近の5年は売上が右肩上がりで成長。
といった所でしょうか。
定性的な調査はこれからですが、各社のビジネスモデルの違いがはっきりと反映されているように感じます。
一番の違いはブランド品や装飾品など高価なモノがメインかどうかです。
コメ兵やマーケットエンタープライズは高価なモノ中心です。
逆にハードオフとトレジャーファクトリは衣類や家財道具の比率がどうも高いようです。
他にもハードオフはフランチャイズが多いが、コメ兵、トレジャーファクトリは直営がほとんどといった違いがあります。
今回は以上になりますが、これからも調査を進めていきたいと思います。
(マーケットエンタープライズいらなかったかな。)
あと蛇足ですが、執筆中の店舗売上を見てみると各社大幅に減少していました!
コメ兵が特にひどいが、ほかの会社も8月の既存店売上が10%以上減少している。
これは非常にスリリングな兆候ですね。
一時的であると判断するなら安く買えるチャンスがありそうです。
今後の展開が楽しみです。
リユース市場(自動車、バイク、原付を除く)について調べてみた
何かいい銘柄はないかと四季報をパラパラめくっていて、リユース店を運営する会社の業績が伸びているのが目に付きました。
ハードオフ(2674)やコメ兵(2780)の業績が好調ですね。
ハードオフは直近三年間で売上が50%増、純利も毎年純増しています。
コメ兵も直近3年間で売上が30%増、純利も50%近く増加しています。
あとネット系では有名処のYahoo(4689)、ほかにはネット買取のマーケットエンタープライズ(3135)が注目されているようですね。
結構割安感があるので、買いも視野に入れてちょっと本腰を入れて調査していきたいと思います。
1.リユース市場規模
まずは市場の規模ですが、平成27年度の環境省調査によると国内のリユース市場規模は
消費者の最終需要ベースでおよそ3.1兆円。(環境省調査より)
ちなみに24年度の前回調査から1.2%増加しています。
そのうちの60%超を自動車とバイク・原付バイクが占めています。
自動車とバイク類を除く市場はおよそ1.1兆円で、ネットオークションがその50%,
店頭販売が30%、ネットショップが20%という割合になっています。
品目はたくさんあって個別説明は難しそうですね。
以下では自動車・バイク。原付を除いた市場を見ていきます。
2.市場の成長性
またリサイクル通信の推計では国外への輸出品を含めた市場規模を紹介しています。
こちらの資料では将来の市場規模予測をしていてそれによると2025年で現在から30%の増加を予測しています。年平均で3%の成長ですね。
日本全体の成長率が現在1%未満であることを考えると悪くない数値です。
【リサイクル通信】中古品(リユース)市場規模推計、2014年は1兆5966億円:時事ドットコムより
環境省調査によると現在のリユース品購入経験者は約30%で、今後はネットを中心にリユース品の売買経験者が増加していくことが期待されています。
また、不要になったアイテムの処分方法がアンケート調査によると60%近くが家で保管(退蔵)する調査結果が得られています。
つまり、家に退蔵されたアイテムを市場に流通させることと、市場参加者の増加によって市場が今後増加するだろうということです。
3.利用状況
それではリユースのチャネル別の利用状況はどのようになっているだろうか?
金額ベースの比率は上グラフからわかるが、次は利用者比率を紹介したいと思います。
(この結果も環境省の調査結果から引用)
金額ベースでは50%近くがネットオークションですが、利用人数ではリユースショップが売った人の数で二倍の差が出ています。
買った人ではあまり差が出ていませんね。
4.個別品目
次は品目別の詳細を見ていきます。
環境省調査では品目別のアンケート調査も実施しています。
以下アンケート結果です。
品目によって特徴が出ていますね。
家具ではショップでの購入が多いですが、それ以外ではネットオークションが一番多いです。
また、品目によって購入者属性が違うのも気になります。
家具、家電、スマホケータイでは男性の購入が多いですが、衣類、ブランド品では女性の購入者が多い結果となっています。
全体として20~30代の購入者が多いのはネット購入による影響でしょうか?
5.おわりに
ざっとではありますがリユース市場を概観してみました。
日本全体が停滞する中で、リユース市場は年3%程度の成長が業界では予測されています。その根拠も利用経験者の増加、ネットによる未利用退蔵品の流通が調査結果から示唆されています。
ほかにも経済停滞による節約志向の助長もリユース市場にプラスするかもしれません。
チャネルとしてはネットが主戦となりそうです。
次回はネットのリユース市場、または参入企業の比較を紹介していきたいと思います。
ケータイ三社のバランスシート比較
売上と営業利益に続いてバランスシートの比較を行って見ました。
下のグラフは各社のバランスシートを並べたものです。
(少し見栄えが悪いかも知れません、筆者のエクセル能力不足のせいです。)
資産額で言えば、ソフトバンクが群を抜いています。
無形固定資産額が多いのが特徴です。
右側では純資産額はそこまで変わりませんがソフトバンクの負債額がDocomoの9倍、KDDIの7.5倍ほどあります。
この表にはソフトバンクが借入金を使って企業買収し、その結果のれんが計上されているという事が示されているのでしょう。
次に各社の年次別のバランスシートを見ていきます。
先ずはソフトバンク。以外にも大きな変化は見られませんでした。
純資産の低迷が気になります。
続いてDocomo。
純資産が厚いです! さすがと言ったところです。
ただ、資産や純資産の連続減が気になります。
ケータイ販売の劣勢がバランスシートにも表れているのでしょうか。
最後がKDDI。
毎年純資産を積み上げています。各項目のバランスも安定しながら増加して行っていて、理想的な推移を示しています。
ザックリではありますが、バランスシートの比較をしてみました。
筆者個人はバフェット好きのバリュー投資指向です。
その観点からして、純資産を安定して積み上げているKDDIが一番魅力的に感じる結果となりました。
もちろん、PLやキャッシュフロー、純利益の分配など純資産の変動に影響する要素を個別に見て行く必要があります。
評価の仕方や投資法は人それぞれだと思いますので、読者さまのご意見頂けばと思います。
ケータイ各社のセグメント別売上と営業利益
ケータイ3社のセグメント情報を見て行きたいと思います。
先ずは各社のセグメント別売上と営業利益を紹介します。
データは2016.03期のもので、ソースは各社の有価証券報告書です。
セグメント名にばらつきがありますが、KDDIの通信事業はパーソナルセグメントです。
図1 Docomoのセグメント別売上と営業利益
百万円 | 通信 | スマートライフ | その他 |
売上 | 3,698,900 | 504,100 | 359,300 |
営業利益 | 708,900 | 46,500 | 27,700 |
図2 KDDIのセグメント別売上と営業利益
百万円 | パーソナル | バリュー | ビジネス | グローバル |
売上 | 3,503,255 | 271,763 | 632,032 | 294,409 |
営業利益 | 656,584 | 73,803 | 61,436 | 32,145 |
図3 SoftBankのセグメント別売上と営業利益
百万円 | 国内通信 | スプリント | Yahoo | 流通 |
売上 | 3,144,650 | 3,871,647 | 652,031 | 1,420,416 |
営業利益 | 688,389 | 61,485 | 222,787 | △ 1,284 |
各社ともにメイン事業は国内の通信が利益母体になっているのがわかります。
国内通信事業の比較
通信事業では各社、音声通話料からデータ通信料、そしてコンテンツ料へシフトして行っているのは共通で以前のブログで紹介した通りです。Docomo,KDDIではセグメント分けも行っています。
違いの一つはセット販売。KDDI,SoftBankはインターネットと、KDDIはさらにケーブルテレビをセット販売している事です。
違いのもう一つは格安スマホ。SoftBankがYahooモバイルを積極的に販売している事でしょうか。
それ以外の事業
KDDIはミャンマーで積極的な展開を行っており、グローバル事業の売上が伸びてきています。
SoftBankは米スプリントを買収したことで、他二社とは売上構成が全く異なっています。
ただ、営業利益でみると今のところスプリントは全くと言っていいほど貢献できていません。
SoftBankは他にもYahoo!Japanを保有しているのでその売上と営業利益が計上されています。
流通事業もある様ですが、今回はスルーします。
Docomoは今現在は目立ったその他事業は在りません。国内通信の一本足体制ですね。
ソフトバンクのARPU、契約件数
Docomo、KDDiに続いてソフトバンクのARPUと契約件数も調べました。
先ずはARPU。
Docomo、KDDI同様に音声が一貫して減少し、データの増加と2015年からはサービス
が加わって音声の減少を補っています。
続いて契約件数です。こちらも二社同様に単調増加になっています。
ARPUの低迷を契約件数でカバーしています。
ARPUと契約件数からケータイ端末からの売上を概算しますと以下の様になりました。
Docomo、KDDI、Softbankそれぞれ同じような結果となりました。
ARPUと契約件数を見る限り、各社の傾向差はあまり見られず同じ様な方針を取っている様に見受けられます。
各社が競争を激しくすればARPUなどはもっと各社特徴が出てきそうですが、各社の似た傾向は、消費者側から見た時のケータイ料金の割高感を表しているのかもしれません。
今後契約件数が頭打ちになってくると価格競争が激しくなってARPUはぐっと下がってくるでしょうか。
投資家としても、一ユーザーとしても継続してウォッチして行きたいと思います。
KDDIのARPU(ケータイ一端末の売上高)
前回ブログのDoomoに続きKDDIのARPUも調べて見ました。
音声ARPUが10年弱で1/3程度に著しく低下しています。
その逆にデータARPUが1.5倍ほどになって音声ARPUの減少を補っています。
またKDDIも12年からスマートARPU(IR資料では付加価値ARPU)を導入し年々少しずつですが増加しています。
グラフでは2012年から総ARPUが増加いますが実際の総ARPUはほぼフラットです。(表参照)
これは割引ARPUを加算していないためです。(2015.3で-1040円の値引き)
また、KDDIでは2015年からKPIをARPU(ケータイ一台あたりの売上)からARPA(顧客一人あたりの売上)に変更しました。
これはケータイだけでなく、光回線やケーブルテレビなどと抱き合わせて販売している事と整合します。
グラフを見ると、ケータイ料金が頭打ちなので当然ですね。
ARPUの詳細をグラフにし切れなかったので表も載せておきます。
次に契約件数の推移です。
ドコモと同じく右肩上がりですね。
最後に総合ARPUと契約件数から売上を計算しました。
(KDDIの会社全体の売上の一部の概算です。ご注意ください。)
この計算ではケータイ端末だけでの売上は10年で変わってない事がわかります。
下の図はついでなのでKDDI全体の売上推移をホームページから引用しました。
2006年から2016年の間に1兆円以上の売り上げ増が見られます。
上の図からこの増加分はケータイ端末以外の売上と言う事になります。
KDDIの全体の売上
KDDIはケータイ端末あたりの販売ではなく、ジェイコムや光など他のサービスと合わせて販売する事に注力するようになってきています。
その傾向が売上分析で数値として理解できます。